地方都市の高卒OLが作家になるまで【5】

もう、この会社にはいられない。

男性社員に、未婚をからかわれるのは、笑って我慢してやり過ごす。
でも、社長が笑い話のように、

「三十過ぎて結婚していない女の子は、会社においておけないなあ」

というのだ。
この会社には、もう私の居場所はない。

私は会社を辞める決心をし、同時に、家を出る決心をしました。

  1. 息苦しさの少女期
  2. 旗になる鷹
  3. 昼、働き夜に書く
  4. もう、ここにはいられない

 

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幸い、私には貯金がありました。

18歳から働き続けて、実家で暮らして、家に生活費を入れる代わりに、
自分で全部貯金しておきなさい。
そういわれていたし、
会社で働く以外の時間は、ものを書いていたし、
月一で新幹線に乗って東京の友達と遊んだり、
気に入った車を即金で買ったりしていたけれど。

たかだか18歳から働きはじめた高卒OL。
田舎の小さな会計事務所で働いて、大会社勤務でもない私でしたが、
会社を辞めた時の私の貯金は、二千万円ありました。

会社を辞めて、実家を出ることにしたのは、
30歳にもなって、定職にもつかず、結婚もしていない娘が家にいたら、
親に恥をかかせてしまうだろうと思ったから。

それに、そのとき実家には、二十代半ばで未婚の弟がいました。
田舎の家で、未婚の姉と、跡取りで結婚適齢期の弟がいたら、
弟を優先するのがあたりまえ。

私は千葉の、あまり日が入らない1Kアパートに
身のまわりのものだけを持って引っ越しました。

30歳、無職、高卒たいした資格なし。

エンターティメント小説を一冊、出してもらった程度で作家ともいえない私は、
この先、私はどうなっちゃうんだろうなあ……。
と、はじめて一人暮らしをすることになった狭い部屋で、さすがに少し泣きました。

……の、ですが。
東京には、自分で稼いで自由に暮らしている友人がいて、
私は、そのコミュニティにするっと馴染んでしまったのでした。

漫画家、小説家、編集者。
自分の才能と努力で大きなお金を稼ぎ、独身で自由で、
美味しいものとキレイなものと楽しいものを消費する自由を持つ。

ラグジュアリーホテルのバーでお酒を飲んだり、有名レスラトンに連れて行ってもらったり、
私ははじめて、

大人って、こんなに楽しいんだ!
自分で稼いだお金で遊ぶのって、こんなに自由なんだ!

ということ、身を持って知ったのです。

明日、会社に行かなくちゃいけない。というプレッシャーもなく、
好きな時間に起きて、好きな時間に寝て、
食べたいものを食べ、会いたい人とだけ会う。

田舎から出てきたときは、
派遣に登録して働くしかないか……。と思っていた私でしたが、
彼女達のように自由に暮らしたいと強く思い、
作家ともいえない程度の仕事しかしていなかった執筆仕事に、全力を傾けました。

必死に頑張ったお陰で、大手出版社数社から執筆依頼が入り、
仕事はどんどん増えて忙しくなり、
出版社のパーティなどで、雲の上の人のような漫画家、作家を実際に見るようになり、

私も、売れたい!
もっともっと売れたい!
と、強く思いました。

思えば、それが苦難のはじまりでした。
カンのいい方なら、気づいていると思います。

この頃の私の根っこには、

特別頭が良いわけではない、特別気が利くわけでも、運動ができるわけでもない。
つまらない、何の取り柄もない私。

が、深く深く根を張ったままだった。

この無力感、無価値観を抱えたままで成功しようとする苦難と苦痛を、
その頃の私はまだ知りませんでした。

980740【6】に続く。
有我咲英 ariga sakie 作家・自己啓発小説家


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