地方都市の高卒OLが作家になるまで【4】

会社から帰ってきた私は、出版社からの電話を受けました。

「原稿を手直しして、出版を考えましょう」

そういわれたときは、うれしい!よりも、驚きが先に立ちました。

「これ、生まれてはじめて書いた小説なんですけど……」

そう言うと、電話の向こうの編集さんは本気で驚いていたようでした。

小説を書いたのははじめてでしたが、
お話づくりの基礎は、少女漫画投稿時代に体に染み込んでいたから、
いきなり出版化の話が来たのかもしれません。

  1. 息苦しさの少女期
  2. 旗になる鷹
  3. 昼、働き夜に書く

 

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ものを書く娘を、両親はよく思っていませんでした。

いつまでも子供の遊びを、一銭にもならないことを。
そんなことより、早く結婚しなさい。

私は、ものを書く以外は良い娘をしていました。
良い娘とは、真面目に会社に行ってお給料はちゃんと貯金して、結婚前提の人としか付き合わない。
けれど、
結婚したら、人の世話だけをする人生がはじまるんだ。
そう強く信じているのに、結婚などできるわけはない。

お前なんかと結婚してくれるっていうんだから、ありがたく結婚しろ。
結婚話に、なんだかんだ理由をつけて断る私に親がいうのは、

ここでしか、生きられない。結婚しなければ、生きられない。生きていけるわけがない。

という、強いメッセージです。

私の原稿が本になるかもしれない。
そんな電話を受けても、私は、親に、

「ものを書いて、一人で生きていく」

とは言えませんでした。

特別頭がいいわけでも、特別気がきくわけでも、運動ができるわけでもない。
なんの取り柄もないのに、特別若くもなくなった私が、まさか、

ものを書いて、一人で行きていく。なんて特別な人みたいなこと、できるわけがない。

はじめて書いた私の小説が本になって、書店に並んでも、
私は、東京で漫画家として活躍している友人と、身近な友達にしか、本を見せませんでした。

こんなラッキーなこと、長くは続かない。
結婚せずに、一人で食べていけるほど稼げるわけないんだから、
OLをしながら、この先も小説を書いていけたらいいな。

そんな風に思いながら、OLの傍ら小説を書き、
もうすぐ29歳という年齢になりました。

相変わらず結婚はしておらず、
会社では年下の女性社員がどんどん結婚し、子供を産んで産休明けて仕事に復帰し、
男性社員からは、うっすらと未婚をからかわれる。

それでも、ちゃんとした社会人女性としての振る舞い、
からかわれても本気で相手にせずに、笑ってやり過ごすことで、
なんとか対面を保っていました。

そんな年の忘年会。
いつも「先生」と呼んでいる、会計事務所の所長にお酒を注ぎにいったとき、

「さきえちゃんは、来年、30歳だったよね。
結婚もしてない30歳の女の子は、うちの会社に置いておけないなあ」

と、笑い話のように言われて、私はいつものように、

「もー、先生! やめてくださいよー」

と、笑顔で返しました。
でもそのとき、思いました。

私はもう、この会社にはいられないんだ、と。

980740【5】に続きます。
有我咲英 ariga sakie 作家・自己啓発小説家


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