地方都市の高卒OLが作家になるまで【1】

地方都市の、
イメージとしては遠野物語か、八つ墓村か(笑)
水田に囲まれた集落で生まれ育ち、
女の子が大学に行く、という選択肢すら考えもつかなかった、
そんな私が、作家として自分の文章一本で食べていくまでのお話しです。

 

 

「たぶん私は一生、人の世話だけをして、
自分の好きなことは何も出来ずに終わるんだろうな……」

特別頭がいいわけでも、明るく気が利くわけでも、運動ができるわけでもない。
地方都市の、それも農村部。

女の子は長男を育てるついでに育てられているような。
生まれた時から、長男以外の子供は、
「差別ではなく、区別」されて、
男尊女卑すら気づかないほど、自然な状態として機能している場所で、
私は、うっすらと人生に絶望した少女時代を過ごしました。

女の子に高校以上の教育を受けさせることなど、思いつきもしない大人と、
そんな空気を子供の頃から読み取って、
高校を卒業したら、家から通える会社に就職して二十代で結婚して出産して、
家族と子供の世話をして、子供が孫を産んだら孫の世話をして一生を終える。

私には、そんな未来しかない。
私が好きなこと、好きなもの、好きな場所。
そんなものは、手に入らない。

未来など、現実など、楽しいことは何もない。

私の家には、本がありません。
両親も祖父母も本を読む習慣がない。だから、書店に行くこともない。
本を所有する、ということ自体、私は知らなかったと思う。

そんな私が唯一、持っていた自分だけの「読み物」は、
「詩とメルヘン」という月刊誌のバックナンバーでした。

母の実家に、結婚した叔母が残していった古い雑誌が積まれていて。
母の実家に行くたび、私がずっと読んでいるので、祖母が私に持たせてくれたんです。

―――私の海には、桟橋がない。
そんな書き出しで始まる詩。
心を持ってしまった、遊園地のブリキの道化とバレリーナ人形。

何度も何度も、雑誌を読んで、覚えてしまうくらい読んで。
それでも繰り返し、繰り返し、私は古い雑誌を読んでいました。

愛する人に愛される。少女らしい、そんな夢に夢中になるには、
私は“私の現実だと思っているもの”に、絶望していて。

結婚したら、人の世話だけをする人生が始まるんだと怯えているからこそ、
美しい非現実の世界に憧れた。

特別頭がいいわけではない、特別気が利くわけでも、運動ができるわけでもない。

何者にもなれるわけがない私は、
美しい非現実世界は、結婚をするまでの一時、趣味としてひっそり楽しめばいい。
そんな風に思い、高校を卒業してすぐに、家から通える会社に就職しました。

980740【2】に続く。

 

 

有我咲英 ariga sakie 作家・自己啓発小説家


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